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2010W杯日本代表テクニカルレポート<後編> 

Football goes on vol.30

「2010W杯日本代表テクニカルレポート<後編>」


フットピーポーよ、休憩できた?目薬差した?タバコ吸った?風呂入った?じゃあ前回の続きいってみます。一応前回を全て読んだことを前提にして書き進めます。


(4)今大会の日本代表の得点パターン

ここはまず「攻撃力不足を補う決定力の高さ」が発揮されたケースを考えてみたい。日本の得点は4つ。その内2つはFK。これは純粋にキッカーの決定力、つまりFK技術の高さによる決定力を発揮したという事になる。

残りの2つ。そのうちの1つカメルーン戦での得点は松井の上げた質の高いクロスを、大久保が競り合いで潰れ役になり、最後はファーの本田が足元に落とし流し込むだけというパターンから生まれた。

もう1つ、デンマーク戦での3点目。高い位置でボールをカットした大久保が素早く本田へパスをし、2対2の状況から本田が素晴らしいターンでDFをかわし、残る1人のDFを引きつけて中央フリーの岡崎にラストパス。岡崎は「流し込むだけ」というパターンから得点は生まれた。

つまり日本の「攻撃力不足を補う決定力の高さ」とは純粋に得点者の決定力に依存したものは半分(しかもそれはFK)。あとの半分は「質の高いチャンス」から「流し込むだけ」という得点者の決定力は問われない状態から生まれているとういう事になる。

勝因や敗因の所ではあえて大雑把に表現した「攻撃力不足を補う決定力の高さ」の正体は「質の高いチャンス」を作れたかどうか、だった訳です。つまり日本はFKを除きいまだ得点者の決定力の高さを活かして得点していない。

しかし逆に言うと「決定力不足」でも得点を決める事ができている。という事になりませんか?

今大会での日本代表の得点パターンが教えてくれる事、それは「決定力不足」でも「質の高いチャンス」を作れば得点する事はできる。しかし「質の高いチャンス」を作らなければ日本代表は得点ができない(FK、セットプレーを除く)という事も同時に突きつけられた訳です。


(5)今大会の日本代表の問題点

 
 今大会を振り返って目に付いた問題点、それは攻撃面でした。(4)で出た結論から言うと「質の高いチャンス」を上手く生めなかったという事になります。

 日本は大会直前に戦術をガラリと変えた事は(1)で書きました。しかもその戦術変更は本大会登録の23人を発表した後、大会2週間前に行われました。

 よって変更する前のコンセプト「高い位置からプレスでボールを奪う」「ポゼッションを高めパスで崩す」に基づいて選んだ23人でその変更した戦術を実行する事になった訳です。

 その矛盾が攻撃する時に「質の高いチャンス」を作れないという形で現われました。攻撃面での不安定さは多分に選手の能力差もありますが、その能力差をチームが、組織が埋められなかったという点も見逃せません。

 選手のキャラクターに頼った攻撃方法は、ジーコ監督時代のような戦術が選手の能力不足を補わない、個人能力がモロに出てしまう危うさを特に未整備だった攻撃面で浮き彫りにしてしまいました。

 「頼むぞ本田」「松井なんとかしてくれ」「大久保がんばれ」という攻撃方法になってしまった訳です。そこにドイツのようなチームとして組織的な連動するカウンターアタックは見られませんでした。そんな中でも見事に期待に応え、少ないながらも「質の高いチャンス」から得点を奪えた事はこれはもう個人能力。「よくやった本田」「松井ありがとう」「大久保がんばった」という事になります。

 もし、あの戦術変更が2009年9月のオランダ戦の後ぐらいになされていたら。「質の高いチャンス」を生む有効なカウンターアタック、もしくは有効な選手を見つけられたのかもしれません。

 予選を突破したチームを熟成する道を選んだのなら、なぜ本大会直前にそれこそ付け焼刃的な守備固めを行ったのか。どうしてそんな事態に陥ったのか。

 ベスト16という結果が出て、「サッカーは結果が全て、だから岡田監督のやり方は正しかった」とはどうしても思えない。大会2週間前であそこまで行けたなら、1ヶ月かけてたら、いや半年かけてたらどうなったのか。

 今大会の代表を見ると「結果」と「内容」の矛盾というよりも、「結果」と「準備」の矛盾が目立ちます。その矛盾にロジックは無い。「必然性」も無い。つまりどうしても「たまたまうまくいった」に見えてしまう訳です。

 ベスト16という「結果」でそれらの矛盾が無かった事にされていたら、この問題は繰り返されます。オーバーに言えばサッカーは何が起きるか分からない、だから「必然性」が無くても、低くても非難なんてするな。やってみなければ分からない、と。そのツケは「やってみた」次のW杯の初戦で払う事になるのでは。

 今大会の僕が考える最大の問題点、それは「やれる事を全てやったと思えない」です。


(最終章)今大会から考える日本の方向性


 岡田監督の事をボロクソに書きましたが、岡田監督が大意会前に掲げていたコンセプトはそんなに間違っていないと思っています。

 特に「日本人は真面目で持久力があるのでプレッシングに向いている」という点は全面的に大賛成です。「フィジカルが弱いので接触プレーを避けて、アジリティを活かし素早いパス回しでサイドから崩す」というのも賛成。ただし残念ながら岡田監督にはその理想をチーム戦術として浸透させる能力が足りませんでした。

 今大会で日本が圧倒的に世界水準よりも上だった項目があります。それは「走行距離」です。他のチームが概ね1人あたり10km前後だったのに対して、日本は平均13kmです。

 少し無駄に走りすぎているという面もあるけど、やはり走行量は日本の強みだった。それは唯一オシム時代から4年間継続され浸透した「走れ」という狙いが、結果的に世界に通用した強みになりました。

 勝因であった「守備の安定性」、課題である「質の高いチャンスを作らなければいけない」、そして唯一世界レベルに達した「走行距離」。これらから考えられる今大会から見える日本代表の向かうべき方向性は「プレッシングサッカーの追求」ではないかと考えています。

 日本の勝因「守備の安定性」がプレッシングを捨てた事によって達成された事は事実です。しかしそれは「岡田式プレッシング」であって、僕らはプレッシングのスペシャリストが整備した日本人による本物のプレッシングはまだ観ていません。

 後ろに人数をかけて引いて守る方法では、「質の高いチャンス」を多く作る事は、スペシャルなアタッカーが現われない限り難しい。しかし高い位置でボールを奪い、奪うために使った人数が、即、攻撃時にも使えるプレッシングなら、守備と攻撃が連動するプレッシングなら組織的に「質の高いチャンス」を多く作る事を助けてくれるはずです。

 「守備の安定性」という勝因が安全第一の方法論で実現していた以上、攻撃の為にその安全性を多少減少させても僕は止むを得ないと考えます。ただし「守備の安定性」が敗因レベルにまで下がってしまうのはダメ。リスキーなプレッシングによる「守備の安定性」をどこまで高められるか。弱者は、弱者こそはリスクを抱えなければ。

 だからこそリスクマネージメントが的確にできるスペシャリストが必要です。いくら世界有数の「走行距離」を誇っていても90分間プレッシングを行うことは不可能。その強弱、かけるラインの高低の状況判断を的確に植えつけられる。また、高い位置で奪ってからそれを「質の高いチャンス」に結びつけるオートマティズムも叩き込める。そんな監督が日本に必要だと僕は思います。

 代表監督にプレッシングのスペシャリストが就任する事は、もうひとつ重大な効果があります。

 日本サッカーの最大の情報発信元はやはりいまだに日本代表なんです。代表が3バックをやめれば、Jのクラブも4バックになる。代表が1トップ2ウインガーになればJもスリーフォワード化する。

 もし代表にプレッシングのスペシャリストが就任したらたぶんJにもプレッシングの洗礼が訪れるはずです。日常であるJのプレッシングレベルが上がるとどうなるか。プレッシングをかける能力が上がるのはもちろん、今の日本が苦手とする「プレスを受けた中でのプレーの精度」も日常で鍛えられて結果あがるんです。これがでかい。

 プレッシングの生みの親、サッキ率いるミランは普段から紅白戦や練習で当たり前のようにプレスをかけあっていたので所属の選手の「プレス対応力」が格段に高くなり、他のチームがプレッシングを真似しだしても相変わらず強かった。

これは現在のバルサにも同じ事がいえます。さらにこのプレスの掛け合いがエリア単位で行われているのがヨーロッパです。だからヨーロッパのプレーヤー、特に3大リーグのプレーヤーは高いプレスの中でも普通にプレーができるように進化している。そしてそれが「世界基準」になっていく訳です。

 そしてこれはまったく個人的な願望になるんですけど、プレッシングは胸を打つんです。今大会でいえばスペイン×パラグアイ。パラグアイの想像を超えた激しいハイプレスが効いて、スペインをジャイアントキリング寸前まで追い込んだあの試合。

途中から完全にパラグアイに肩入れして観てました。こんなに死力を振り絞るようにしてスペインの倍は走り、プレスをかけ続けて耐えているんだから神様こいつらを勝たせてやれよ、と。関係の無い日本人の胸を打つものがありました。僕は自国の代表の選手が同じように死力を尽くしてプレスをかけて闘う姿が観たい。

何もベニテス、モウリーニョ、リッピのような有名な監督に絞る必要はありません。ヨーロッパで「プレッシングのスペシャリスト」という基準さえあれば候補はゴロゴロ出てきます。ダメなら次の候補に変えればオッケー。

「プレッシングのスペシャリスト」というおおまかな監督の基準は同じ基準で能力を審査するうちに「プレッシングの強弱のかけ方」や「奪ってからの攻撃」などその時その時の課題で細分化され、進化していくはずです。

重要なのはそこです。一定の方向性で、継続して進化していく。

「プレッシング」に関しては僕の好みがかなり大きく占めています。でもこの「一定の方向性で、継続して進化していく」これなら多くの人に共感してもらえるはずです。もう運に身を任せて大会直前に戦術変更なんてまっぴらです。

4大会連続でW杯に出場し、自国開催以外でもベスト16に進出した日本。そろそろこの辺で優勝した国の監督や、有名な監督の力によって引き上げてもらうレベルから、自らの意思でネクストレベルに突入しなければいけないと僕は思います。

それには自分達の特性、優位な点、劣っている点を分析して、狙い、つまり「理想」を打ち出すべきなんです。「理想」の無い、または「理想」とかけ離れた「必然性」の無い目先の勝利で喜び続ける限り、いつまでたっても勝利はその時次第になってしまいます。

思い起こすのは決勝戦前のスペイン代表シャビのコメントです。

「決勝だからといってやり方は一切変えない。例え負けたとしてもスペインは理想とともに死ぬ覚悟はできている」

このシャビの勝敗を超越した境地。僕はそこから見える風景を自国の代表で観てみたい。これが俺たち日本のサッカーだ。世界に向かって胸を張って、さらに世界が日本て凄いと憧れるようなサッカーをかます代表を僕は観たい。

それには自分達の特性に基づいたサッカーを、継続して進化させていかなければいけない。それが僕の今大会から考えた日本代表の方向性です。そして個人的にはそれはプレッシングだと主張したい!


デリケートな内容なので今回は思いっきり余さず書きました。もう自分でも笑っちゃうような過去最大級の長文になってしまいましたが、ここまで根気よく読んでくれてありがとうございました。これにて仮想「10W杯日本代表テクニカルレポート」を終えます。

なんだかサッカー協会の動きや日々の報道を見るに、どうも僕の理想とは違う形で日本代表は進みそうだけど、それでもフットボールは前に進みます。それではまた!気まぐれに!



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